働き方改革推進支援助成金とは?3つのコースの要件や申請方法を確認しよう
働き方改革推進支援助成金についてお調べですね。
働き方改革推進支援助成金とは、テレワーク新規導入や特別休暇の規定整備の取り組みに対する助成金です。
新型コロナウイルス感染症対策のための「テレワークコース」や労働時間の縮減をするための「労働時間短縮・年休促進支援コース」などが用意されています。
もし、中小企業で働き方改革を推進させたのであれば助成される可能性が高いです。
今回は働き方改革推進支援助成金のコースごとの概要や対象事業主、申請方法を分かりやすく説明します。
令和2年から始まった新しい助成金を活用し、仕事のしやすい環境を整えましょう。
1.働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金とは、テレワーク新規導入や特別休暇の規定整備の取り組みに対する助成金です。
以前までは、「時間外労働等改善助成金」という名前の助成金でした。
しかし、令和2年度より名前が変更されて「働き方改革推進支援助成金」となったのです。
令和2年の新型コロナウイルス感染症対策として、働き方を変えていかなければならない会社は多いでしょう。
そこで、働き方改革推進支援助成金に新型コロナウイルス感染症対策のためのコースが追加されました。
働き方改革推進支援助成金には、以下の3つのコースがあります。
テレワークコース | 新型コロナウイルス感染症対策として新しくテレワークを導入する中小企業を助成する |
職場意識改善特例コース | 新型コロナウイルス感染症対策として労働者が利用できる特別休暇の規定を整備した中小企業を助成する |
労働時間短縮・年休促進支援コース | 労働時間の縮減や年次有給休暇の促進をするための規定を整備した中小企業を助成する |
これら3つのコースは、それぞれ対象事業主の要件や支給額が異なります。
次の章から順番に、3つのコースについて詳しく見ていきましょう。
2.働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
テレワークコースを使えば、新型コロナウイルス感染症対策として新しくテレワークを導入する中小企業に対して助成金が支給されます。
在宅またはサテライトオフィスでの就業するテレワークを導入するために必要な経費に対して助成されるのです。
コロナウイルス感染症対策の助成金であるため、交付申請期限は令和2年12月1日までとなっています。
対象事業主の要件・支給対象となる取り組み・支給額・申請方法について具体的に確認していきましょう。
(1)対象事業主
支給対象となる事業者は、以下のいずれかの要件に当てはまる中小企業業者です。
- テレワークを新規で導入する事業主
- テレワークを継続して活用する事業主
導入・実施の期間は、令和2年2月17日〜5月31日と定められています。
さらに、労働者災害補償保険の適用事業主である必要があります。
(2)支給対象となる取り組み
テレワークの導入や実施をするために、以下のような取り組みを1つ以上実施する必要があります。
- テレワーク用通信機器の導入・運用
- テレワーク勤務に関する就業規則・労使協定等の作成・変更
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門によるテレワーク導入のためのコンサルティング
テレワーク用通信機器とは、具体的に以下のような機器が挙げられます。
- パソコンなどの新クライアント端末
- VPN装置
- WEB会議用機器
- 保守サポートやクラウドサービスの導入
ただし、シンクライアント以外のパソコン・タブレット・スマートフォンは対象外なので注意しましょう。
(3)支給額
支給額は、対象経費に対して補助率を乗じて計算します。
テレワーク導入に対する成果目標の達成状況によって補助率が変わるので注意しましょう。
対象経費
対象経費は、以下のように定められています。
謝金・旅費・借損金・会議費・雑役務費・印刷製本費・備品費・機械装置等購入費・委託費
対象経費の補助率と上限額
対象経費の補助率は、成果目標の達成状況によって異なります。
- 評価期間(令和3年2月15日までの1ヶ月〜6ヶ月の期間)に1回以上、対象労働者全員にテレワークを実施させる
- 評価期間において、対象労働者がテレワークを実施した回数の平均が週1回以上になっている
2つの成果目標に対して達成か未達成かによって対象経費の補助率や上限額が異なります。
達成状況 | 達成 | 未達成 |
補助率 | 3/4 | 1/2 |
1人あたりの上限額 | 40万円 | 20万円 |
1企業あたりの上限額 | 300万円 | 200万円 |
助成額
助成額は、以下のように計算します。
対象経費の合計額×補助率
ただし、上限を超える場合は以下のいずれか低い額が適用されます。
1人あたりの上限額×対象労働者数 or 1企業あたりの上限額
たとえば、以下のようなときの助成額を計算しましょう。
- 対象経費:400万円
- 対象労働者:10人
達成・未達成で補助率が異なります。
成果目標達成のとき | 400万円×3/4=300万円助成 |
成果目標未達成のとき | 20万円×10人=200万円助成 |
達成・未達成によって大きく支給額が変わるので注意しましょう。
(4)申請方法
助成金を受給するためには、3つの手続きが必要です。
- 働き方改革推進支援助成金交付申請書の提出
- 取り組みの実施
- 支給申請
順番に確認していきましょう。
①働き方改革推進支援助成金交付申請書の提出
まず、働き方改革推進支援助成金交付申請書をテレワーク相談センターに提出します。
申請は、令和2年12月1日までです。
このとき、以下の必要書類も一緒に提出しましょう。
- 事業実施計画変更申請書
- 事業実施計画(変更)
- 対象労働者同意書(変更後)
- 見積書※必要な経費の算出根拠がわかる資料)
見積書以外は、働き方改革推進支援助成金交付申請書のフォーマットに含まれています。
申請マニュアルを参考に、記入していきましょう。
②取り組みの実施
申請した実施計画通りに、事業を実行していきましょう。
このとき、以下の2つの目標を達成することが重要です。
- 評価期間(令和3年2月15日までの1ヶ月〜6ヶ月の期間)に1回以上、対象労働者全員にテレワークを実施させる
- 評価期間において、対象労働者がテレワークを実施した回数の平均が週1回以上になっている
達成・未達成で助成される補助率が変わるので、達成を目指しましょう。
③支給申請
計画の期間が終われば、働き方改革推進支援助成金申請書をテレワーク相談センターに提出しましょう。
このとき、必要な書類は以下の通りです。
支給申請の締め切りは、令和3年3月1日までです。
不備がなければ、厚生労働省から助成されます。
3.働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)
職場意識改善特例コースを使えば、新型コロナウイルス感染症対策として労働者が利用できる特別休暇の規定を整備した中小企業に対して助成金が支給されます。
たとえば、緊急事態宣言に伴って子供の休校による特別休暇制度を設定したり、本人や家族の病気休暇制度を整えることに対して助成されるのです。
コロナウイルス感染症対策のための助成金であるため、交付申請期限は令和2年7月29日までとなっています。
対象事業主の要件・支給対象となる取り組み・支給額・申請方法について具体的に確認していきましょう。
(1)対象事業主
対象事業主は、以下の要件を全て満たす中小企業事業主です。
- 新型コロナウイルス感染症対策として、特別休暇の規定を新しく整備した事業主
- 労働者災害補償保険の適用事業主
特別休暇の規定期間は、令和2年2月17日〜7月31日と定められています。
(2)支給対象となる取り組み
新型コロナウイルス感染症対象のひとつとして、病気休暇制度や従業員の子どもの休校・休園に関する特別休暇制度の整備に対して助成されます。
あくまでも新型コロナウイルスの感染症対策として規定することがポイントです。
具体的には以下のような取り組みが認められます。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修や周知・啓発
- 外務専門家によるコンサルティング
- 就業規則等の作成や変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア・労務管理よう機器の導入や更新
- デジタル式運行記録計の導入や更新
- テレワーク通信機器の導入や更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入や更新
具体的に計画を立てましょう。
(3)支給額
支給額は、以下のどちらか低い方の額です。
- 対象経費の合計額×補助率3/4
- 1企業あたりの上限額50万円
全額給付されるわけではないので、注意しましょう。
(4)申請方法
受給するためには、以下の3つの流れに沿って行いましょう。
- 特別休暇の整備または支給対象の取り組みを実施
- 交付申請の提出
- 給付申請書の提出
3つの流れに沿って詳しく確認していきましょう。
①特別休暇の整備または支給対象の取り組みを実施
まずは、特別休暇の整備または支給対象の取り組みを実施しましょう。
通常、助成金は計画書を提出してから施策を実行していきます。
しかし、職場意識改善特例コースは、いきなり特別休暇の整備などを行っても問題ありません。
なぜなら、新型コロナウイルス感染症対策のため急いで整備しなければならない事業者も多いからです。
事業実施期間である令和2年2月17日〜7月31日までの間に実施しましょう。
②交付申請の提出
つづいて、都道府県労働局雇用環境・均等部に交付申請をしましょう。
交付申請は、令和2年7月29日が期限となっています。
交付申請には、以下の書類が必要です。
- 働き方改革推進支援助成金交付申請書
- 働き方改革推進支援助成金事業実施計画
- 対象事業場一覧
これらは、厚生労働省のホームページに掲載されている『働き方改革推進支援助成金交付申請書(様式第1号)』にフォーマットがあります。
さらに以下の書類も必要です。
- 就業規則、特別休暇に関する新旧比較表
- 事業実施にかかった支出が証明できるもの(領収書や請求書など)
交付申請について、記入例が申請マニュアルに掲載されているので確認しましょう。
③給付申請書の提出
交付が決定したら、都道府県労働局雇用環境・均等部に給付申請書を提出しましょう。
給付申請は、令和2年9月15日が期限となっています。
給付申請には、以下の書類が必要です。
- 支給申請書・事業実施結果報告書
- 労働時間等設定改善委員会の設置等労使の話し合いの機会について、客観的に話し合いが行われたことがわかる資料(議事録や参加名簿など)
- 労働時間等に関する個々の意見や要望を受け付けるための担当者についてどのように周知したかわかる資料
- 事業計画実施について労働者にどのように周知したかわかる資料
- 事業の実施に際して支出したことがわかる書類(領収書や請求書など)
- 事業を実施したことがわかるしい量
- 就業規則・特別休暇に関する新旧対照表
- 他の補助金を受けている場合は、補助金内容が分かる資料(通知書など)
不備がなければ、厚生労働省から支給されます。
4.働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
労働時間短縮・年休促進支援コースを使えば、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進をするための規定を整備した中小企業に対して助成金が支給されます。
毎年行われている助成金制度ですが、2020年度の交付申請は11月30日までです。
対象事業主の要件・支給対象となる取り組み・支給額・申請方法について具体的に確認していきましょう。
(1)対象事業主
対象事業主は、以下の要件にすべて当てはまる中小企業です。
- 労働者災害補償保険の適用を受けている
- 36協定を締結している
- 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
- 交付申請時点で成果目標の1〜4の設定に向けた条件を満たしている
成果目標とは、以下の通りです。
成果目標1
すべての対象事業場において、月60時間を超える36協定の時間外労働時間数を縮減させること。
- 時間外労働時間数で月60時間以下に設定
- 時間外労働時間数で月60時間を超え、月80時間以下に設定
成果目標2
すべての対象事業場において、所定休日を1日から4日異常増加させること。
成果目標3
交付要網で規定する特別休暇(病気休暇・教育訓練休暇・ボランティア休暇)のいずれか1つ以上の全ての対象事業場に新たに導入すること。
成果目標4
時間単位の年次有給休暇制度を全ての対象事業場に新たに導入させること。
(2)支給対象となる取り組み
支給対象となる取り組みを1つ以上実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修や周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成や変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理ソフトウェア・労務管理用機器・デジタル式運行記録計の導入や更新
- テレワーク用通信機器の導入や更新
- 労働能率の増進のために必要な設備・機器などの導入や更新
これらの取り組みを1つ以上実施しましょう。
(3)支給額
支給額は、成果目標の達成状況に応じて以下のいずれか低い額です。
- 成果目標1〜4の上限額及び加算額の合計額
- 対象経費の合計額×補助率3/4
成果目標ごとの上限額を確認していきましょう。
成果目標1
事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | 事業実施前の設定時間数 | |
36協定において、時間外労働時間等が月80時間を超える時間を設定している | 36協定において、時間外労働時間等が月60時間を超える時間を設定している | |
時間外労働時間数で月60時間以下に設定 | 100万円 | 50万円 |
時間外労働時間数で月60時間を超え80時間以下に設定 | 50万円 | ー |
成果目標2
達成日数 | 上限額 |
所定休日3日以上増加 | 50万円 |
所定休日1〜2日以上増加 | 25万円 |
成果目標3
一律で50万円
成果目標4
一律で50万円
賃金引き上げの達成時の加算額
賃金引き上げも同時に行うと、加算額として支給額に上乗せされます。
引き上げ人数 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人 |
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人あたり5万円 (上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人あたり8万円 (上限240万円) |
(4)申請方法
受給するためには、以下の3つの流れに沿って行いましょう。
- 交付申請
- 事業実施
- 支給申請
3つの流れに沿って詳しく確認していきましょう。
①交付申請
まずは、都道府県労働局に交付申請をしましょう。
交付申請は、令和2年11月30日が期限となっています。
交付申請には、以下の書類が必要です。
- 交付申請書・事業実施計画
- 36協定届の写し
- 就業規則の写し・年次有給休暇管理簿の写し
- 対象労働者の交付申請前1ヶ月分の賃金台帳の写し
- 事業実施に必要な経費がわかる資料(見積書など)
交付申請について、記入例が申請マニュアルに掲載されているので確認しましょう。
②事業実施
交付が認められたら、支給対象の事業を実施しましょう。
期間は、交付申請以降に行い、1月29日までに完了させる必要があります。
36協定の作成・変更や研修の実施、機器の購入など、立てた計画通りに実施していきましょう。
③支給申請
交付が決定したら、都道府県労働局に「働き方改革推進支援助成金支給申請書」および「事業実施結果報告書」を提出しましょう。
給付申請の期限は、以下のどちらか早い日までです。
- 事業実施期間が終了した日から30日以内
- 令和3年2月12日
給付申請には、以下の書類が必要です。
不備がなければ、厚生労働省から助成されます。
5.働き方改革推進支援助成金を通すための3つのポイント
ここまで、働き方改革推進支援助成金の3つのコースについて詳しく確認してきました。
しかし、働き方改革推進支援助成金は申請をすれば必ず支給されるわけではありません。
そこで、申請前に以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
- 早めに申請する
- 支給対象の要件をよく確認する
- 専門家に相談する
順番に確認していきましょう。
ポイント1.早めに申請する
条件にあてはまる助成金を見つけたら、早めに申請しましょう。
なぜなら、申請期限までに国の予算が尽きてしまうケースがあるからです。
この場合、事前告知なしで申請ができなくなってしまいます。
採択率の高い厚生労働省の助成金ですが、人気の補助金はすぐに予算が尽きてしまうのです。
終了してしまう前に、できるだけ早めに申請しておきましょう。
ポイント2.支給対象の要件をよく確認する
支給対象の要件をしっかりと確認しましょう。
なぜなら、「もらえると思い込みで実施していたことが実は支給対象の事業じゃなかった」というケースも珍しくないからです。
後々要件が合わないと気づいても、助成金をもらうまでに時間もお金もかかってしまいます。
しっかりとコースごとの支給対象の要件を確認しておき、確実に助成金を受給しましょう。
ポイント3.専門家に相談する
働き方改革推進支援助成金は、専門家に相談することをおすすめします。
というのも、令和2年度からの新しい助成金制度だからです。
新しい助成金制度は、事例が少ないため参考にする文献がなかなか見つかりません。
また、コロナウイルス感染症対策のための補助金は実施期間や申請期間が短く設定されています。
そのため、素早く書類を作成したり揃えたりしなければなりません。
迅速に正確な申請をするためにも、専門家に相談することをおすすめします。
6.働き方改革推進支援助成金なら井上社労士事務所にご相談を!
働き方改革推進支援助成金が気になっているのであれば、井上社労士事務所にご相談ください。
井上社労士事務所は、常に最新の情報を集めています。
そのため、新しい助成金制度である働き方改革推進支援助成金も正確に申請できるのです。
どうすれば受給額が最大化できるかまでアドバイスいたします。
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もちろん相談料は無料です。
お気軽に井上社労士事務所をご活用ください。
まとめ
働き方改革推進支援助成金とは、テレワーク新規導入や特別休暇の規定整備の取り組みに対する助成金です。
以下の3つのコースがあるので、あてはまるコースを選びましょう。
- テレワークコース
- 職場意識改善特例コース
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
中小企業で働き方改革を推進させたのであれば受給することをおすすめします。
もし、条件に当てはまるのに「時間がない」「面倒」という理由で受給しないのはもったいないです。
少しでも働き方改革推進支援助成金に興味があるのであれば、助成金に強い井上社労士事務所にご相談ください。
専門家の力を借りて助成金を活用し、従業員の職場環境を整えていきましょう。