介護職員等特定処遇改善加算の要件と計算方法を解説!
介護職員等特定処遇改善加算は、これまでの介護職員の雇用環境改善への取組の一種です。
特にこの加算制度は、職場のリーダー的な存在に対し長期的なキャリアを目指してもらえるようことを目的とした取り組みであり、これにより職場も安定した環境を整えることができます。
今回は、介護職員等特定処遇改善加算の概要や加算要件、計算方法や注意点について詳しく解説していきます。
介護現場に関わっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.介護職員等特定処遇改善加算とは?
全産業を対象とした賃金調査において、介護職員の賃金が全産業の平均よりも低いという調査結果が出ています。
これまでも介護職員の職場定着のための取り組みとして、介護職員処遇改善加算等の取り組みが行われていましたが、さらに定着率の向上を目指し、現場のリーダー的職員の賃金を全産業の平均年収440万円へ引き上げるため、介護職員特定処遇改善加算が設けられることとなりました。
介護職員が長期間勤めるとキャリアアップにつながることになり、給与面での不安から離職することを防ぐことが目的となっています。
2.介護職員等特定処遇改善加算の要件
本加算は、「経験・技能がある介護福祉士」を対象とし、以下の要件に該当する必要があります。
また、以下の3つについて理解する必要があります。
- キャリアパス要件
- 職場環境要件
- 要件の対象外となるサービス
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.キャリアパス要件
キャリアパス要件には、以下の3つの細かな要件が存在します。
<キャリアパス要件Ⅰ>
①②③の全てを満たすこと。
①介護職員の職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定めていること。
②介護職員の職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(臨時的に支払われるものを除く)について定めていること。
③任用等の要件、賃金体系の内容について就業規則等の明確な根拠規定を整備し、全ての介護職員に周知していること。
この要件では職責や賃金体系の内容を職場でしっかりと整備していることが求められます。
<キャリアパス要件Ⅱ>
①②の全てを満たすこと。
①介護職員の職務内容、意見交換等を踏まえ、資質向上の目標に向けた具体的な計画を策定し、計画に沿った研修の実施、研修の機会を確保していること。
②研修の実施や研修の機会の確保について全ての介護職員に周知していること。
要件Ⅱでは、研修など職員への教育体制が充実していることが要件です。
<キャリアパス要件Ⅲ>
①②の全てを満たすこと。
①介護職員について、経験や資格等に応じて昇給する仕組み、一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。
要件を満たす仕組みとは、以下のようになります。
- 経験、勤続年数、経験年数、保有資格などに応じて昇給する仕組み
- 介護福祉士や実務者研修修了者など資格取得に応じて昇給する仕組み
- 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
- 人事評価などの結果に基づき昇給する仕組み
②昇給する仕組み内容について、就業規則等の明確な根拠規定を整備し、全ての介護職員に周知していること。
要件Ⅲに該当するためには、昇給の仕組みが具体的に整備されていることが必要です。
2-2.職場環境要件
職場環境要件では、現場で働くスタッフがより快適に介護職に携われるよう、機械・器具の導入や育児休暇の設定など、賃上げ以外の職場環境の改善を行うことが求められます。
これらを満たし申請が承認されると加算認定されます。
加算された後は、以下3つのルールに基づき介護職員の賃上げを行います。
<介護職員の賃上げルール>
①介護サービス事業に10年以上勤務した介護職員(基本的に介護福祉士)で、月額平均8万円・年収の見込み金額が440万円を超える人がいること
②経験や技能のある介護職員の引き上げ額を、その他の介護職員の2倍にすること(主に介護福祉士や勤続年数が長い職員、パートや派遣スタッフも含む)
③その他の職種の職員の平均引き上げ額が、その他の介護職員の2分の1を上回らないこと
2-3.要件の対象外となるサービス
職場環境要件は、以下のケースでは対象外となるので注意が必要です。
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 居宅療養管理指導
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
自分の事業所がこれらに該当していないかチェックしておきましょう。
3.介護職員等特定処遇改善加算の計算方法
加算見込み額は下記のような計算式により計算できます。
各事業所の介護報酬(現行の処遇改善加算分を除く)×各サービスの特定加算(下記表ⅠかⅡの加算率)=特定加算見込み額
4.介護職員等特定処遇改善加算による賃金改善方法の注意点
ここからは、介護職員等特定処遇改善加算による賃金改善を行う際の注意点について解説していきます。
以下の4つのポイントに分けて解説していきます。
- 介護職員の勤続年数
- 計算における手当の取扱い
- 複数のサービスを提供している場合の取扱い
- 賃金改善が開始される時期
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
4-1.介護職員の勤続年数
本加算では、必ずしも勤続10年以上の介護福祉士が1人以上いなくても良いことになっています。
現行の改善加算を取得している場合や、職場環境に関して複数の取り組みを行っている場合、また職員処遇改善加算に基づく取り組みをホームページなどで掲載し可視化している場合などは取得することが可能です。
4-2.計算における手当の取扱い
処遇改善となる対象者の賃金額に手当は含まるので、注意が必要です。
月額8万円に関しては法定福利費は含まれますが、年収440万円については社会保険料などの事業主負担、その他の法定福利費などは含まれません。
4-3.複数のサービスを提供している場合の取扱い
複数の異なるサービスを提供している場合は、それぞれのサービスの介護保険事業所番号が同じであれば、同一の事業所と見なされるため、一つの事業所で条件を一人クリアしていれば特定加算を取得できます。
また、法人一括で複数の事業所の特定加算を取得する場合は、法人全体の賃金改善額が特定加算の算定額を上回っていれば特定加算が可能です。
4-4.賃金改善が開始される時期
賃金改善実施期間は、特定加算算定月と特定加算支給月にタイムラグがあります。
令和元年10月~令和2年3月までの間に行った場合の支給月は、令和元年12月から令和2年5月になり、賃金改善の実施期間は、令和元年10月から令和2年3月になります。
介護職員等特定処遇改善加算を申請しているかどうかは、求人票にも明記されています。
申請をしている事業所は手当の欄に記載があるので、求職の際の目安にもなります。
5.まとめ
これまで、介護職員等特定処遇改善加算の要件や計算方法、注意点についてまとめてきました。
本加算はほとんどの事業所が必要条件を満たし、届出を提出することができるため、介護職員のキャリアアップに賃金面で良い影響があると期待されています。
介護職員を取り巻く現状はまだまだ厳しいのが現実ですが、本制度を用いて職員の環境の充実をはかっていきましょう。