トライアル雇用助成金を活用し、介護業界の人手不足を解消しよう
諸事情を抱えた労働者を最初から正規労働者と雇い入れることは、とてもリスクが大きいと考えている事業主も多いと思います 。
そこで、助成金をもらった上でお試し期間を経て採用してみるというのはいかがでしょうか。
所定の条件をクリアすれば、助成金が支給され、労働者と事業主の間で実務を通してしっかりと確認する期間を経て正規雇用する「トライアル雇用助成金」というシステムが存在します。
今回はそんな「トライアル雇用助成金」についてご説明していきます。
人不足が叫ばれる介護施設において、とても大きな助けとなるシステムですので、この記事を参考に、ぜひ検討してみてください。
1.トライアル雇用助成金とは
「トライアル雇用助成金」とは、その名の通りトライアル(お試し)で雇用することです。
試行雇用と呼ばれることもあり、これまでの職業経験や知識、技術が不十分であることが原因で安定した職業に就くことが困難な求職者の就職を、雇い入れた企業側に助成金をことで促進させ、就職支援するものになります。
雇用するだけではなく、一定期間のトライアルを経て雇い入れた事業主が受給対象です。
就職してから順調にトライアル雇用が終了したあと、その後も継続してその対象者を従業員として雇い入れることも可能なので、トライアル期間を通してお互いの様子を体感し、ゆっくり判断することができることから、とても有益な制度といえます。
そんなトライアル雇用助成金には、さまざまなコースが存在していますので、今回はそれぞれのコースについて解説していきます。
1-1.一般トライアルコース
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とは、これまでの職業経験や技能、知識などの理由から安定的な職に就くことが困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介によって、一定期間試行雇用した場合に支給される助成金のことです。
受給要件
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)を受給するためには、以下のような要件を満たしていることが条件となります。
1)対象となる求職者がハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者から職業紹介を受けた紹介日の時点で、以下のどれにも該当していないこと
- 安定した職業に就職している
- 自営業者や役員に就いていて、1週間で 30 時間以上の実働時間がある
- 学校に在籍している者(在籍中であっても、卒業する年度の1月1日を経過しており、卒業したあとの就職内定がない場合は除く)
- トライアル雇用期間中
2)以下のどれかに該当していること
- 紹介日より前の2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日より前に、離職期間が1年を超えている
- 妊娠や出産、育児を理由に離職し、離職した日から紹介日までの間で安定した職業に就職していない期間が1年を超えているもの
- 紹介日の時点でニートやフリーターに該当し、45歳未満である
- 紹介日の時点で、就職支援において特別な配慮が必要な以下のどれかに該当する
- 生活保護受給者
- 母子家庭の母等
- 父子家庭の父
- 日雇労働者
- 季節労働者
- 中国残留邦人等永住帰国者
- ホームレス
- 住居喪失不安定就労者
- 生活困窮者
3)ハローワークや紹介事業者などの紹介により雇用すること
4)トライアル雇用をすること(期間は原則3ヶ月)
5)1週間の所定労働時間が通常の労働者と同程度であること
※通常は30時間、日雇労働者・ホームレス・住居喪失不安定就労者の場合は20時間を下回らないこと
支給対象期間
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、対象者をトライアル雇用した日から1ヶ月単位で最長3ヶ月の間、支給されます。
支給額
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、支給対象となる期間の月額を算出し、合計した金額をまとめて1回で支給されます。
支給額は、支給対象者ひとりに対して月額4万円です。
もし支給対象者が母子家庭の母や父子家庭の父である場合は、ひとりに対して月額5万円となります。
ただし、以下の条件に当てはまる場合は、該当する月の月額が変動します。
1)以下のどれかの条件に該当し、トライアル雇用期間が1ヶ月未満の月がある場合
1.支給対象者が途中で以下に該当する理由で離職した場合、離職した月の初日から離職日までのトライアル雇用期間中に就労した日数
- 対象者本人の過失による解雇
- 対象者本人都合による退職
- 対象者本人の死亡
- 天災などのやむを得ない理由により、事業が継続できなくなったことによる解雇
2.トライアル雇用期間の途中で、常用雇用へ移行した場合、常用雇用への移行した月の初日から移行日前日までのトライアル雇用期間中に実際に就労した日数
2)支給対象者本人都合による休暇や、トライアル雇用事業主都合による休業があった場合、 その月の1ヶ月間に就労した実際の日数(有給休暇などの休暇は就労した日数としてカウントする)
変動する支給額は支給対象者が予定していた就労日数に対して、実際の就労日数の割合がどれくらいなのかによって変動します。
計算式は次の通りです。
(支給対象者が1か月間に実際に就労した日数)÷(支給対象者が当該1か月間に就労を予定していた日数)
ここで算出した答えを「A」として、月額を決めるための表に当てはめてみましょう。
割合 | 母子家庭の母等又は父子家庭の父以外の場合 | 母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合 |
A≧75% | 4万円 | 5万円 |
75%>A≧50% | 3万円 | 3.75万円 |
50%>A≧25% | 2万円 | 2.5万円 |
25%>A>0% | 1万円 | 1.25万円 |
A=0% | 0円 | 0円 |
1-2.障害者トライアルコース
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)とは、就職が困難な障害者を試行的・段階的に雇い入れることで支給される助成金のことです。
受給要件
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)を受給するためには、以下のような要件を満たしていることが条件となります。
1)以下の条件を全て満たした労働者を雇用する
- 障害者トライアル雇用制度を理解した上で賛同し、継続雇用を希望している者
- 障害者雇用促進法に規定する障害者で、以下のどれかに該当する者
- 紹介日時点で就労経験がない職業に就職することを希望している者
- 紹介日より前の直近2年以内に、離職や転職が2回以上ある者
- 紹介日より前に離職し、その期間が6ヶ月を超えている者
- 重度身体障害者や重度知的障害者、精神障害者に該当する者
2)雇用する時の条件
- ハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介によって雇用すること
- 障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出をすること
支給対象期間
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)は、対象者をトライアル雇用した日から3ヶ月、最長3ヶ月(条件によって6ヶ月)の間、支給されます。
支給額
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)は、支給対象者の状況によって金額が異なります。
- 精神障害者の場合は、月額最大8万円を3ヶ月、もしくは月額最大4万円を3ヶ月(最長6ヶ月)
- それ以外の場合は、月額最大4万円(最長3ヶ月)
1-3.障害者短時間トライアルコース
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)とは、就職が困難な障害者を試行的・段階的に雇い入れることで支給される助成金のことです。
「障害者トライアルコース」との違いは、障害者の状況や体調に応じて1週間の所定労働時間を通常より短い10時間以上20時間未満とし、20時間以上とすることを目指して雇用するという点です。
受給要件
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)を受給するためには、以下のような要件を満たしていることが条件となります。
1)障害者短期トライアル雇用制度を理解した上で賛同し、継続雇用を希望している精神障害者や発達障害者であること
2)雇用する時の条件
- ハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介によって雇用すること
- 3ヶ月〜12ヶ月の間、短時間トライアル雇用すること
支給対象期間
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)は、対象者をトライアル雇用した日から最長12ヶ月の間、支給されます。
支給額
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)は、支給対象者ひとりに対して月額最大4万円を最長12ヶ月に渡って支給されます。
2.トライアル雇用助成金はいくらもらえる?
トライアル雇用助成金は、その対象となる労働者を雇用した日から1ヶ月単位で最長3ヶ月支給されます。
支給方法は、1度にまとめて支給されることを覚えておきましょう。
支給金額は、労働者ひとりにつき月額4万円で、労働者が母子家庭の母や父子家庭の父の場合に限り、月額5万円まで支給されます。
また、トライアル雇用期間中に労働者が離職、または事業主都合で解雇した場合は、上記で述べたような計算式に当てはめて計算し、算出された支給額が支給されますので、合わせて確認しておいてください。
割合によって異なりますが、0円〜5万円までの間で変動します。
3.トライアル雇用助成金の申請方法
ここでは、トライアル雇用助成金の申請方法について整理しておきましょう。
まず最初に、事業主が事前に管轄のハローワークや職業紹介事業者などに対して、「トライアル雇用求人」を提出する必要があります。
その上で、「トライアル雇用求人」を提出したハローワークや職業紹介業者からの紹介を受けて、該当する労働者を3ヶ月という期限付で雇用してください。
トライアル雇用を開始してから2週間以内に、ハローワークや職業紹介業者に対して必要書類を提出します。
ここで提出するのは以下のような書類です。
- 雇用契約書など、労働条件が明記された書類
- トライアル雇用実施計画書
あとは3ヶ月間のトライアル雇用を満了します。
満了したら、その翌日から2ヶ月以内に、管轄の労働局に対して「トライアル雇用助成金の受給申請書」を提出し、承認されればトライアル雇用助成金が支給される、という流れです。
4.まとめ
今回は、トライアル雇用助成金の各コースについてご説明してきました。
支給条件やその対象となる労働者の状態をしっかりと理解し、申請するようにしましょう。
介護業界では慢性的に人手不足であることが問題となっていますので、こういった助成金制度を活用し、人手不足解消に向けた一助になればと思います。
知らなければもらえない助成金ですから、正しく把握してどんどん利用していくようにしましょう!
ぜひ一度、トライアル雇用助成金について、検討してみることをオススメします。