地域密着型通所介護について徹底解説
介護事業と言ってもさまざまな業種が存在しています。そのため「これから介護事業を開業したいと思っているが、どのような業態で始めたらいいのかわからない」と迷っていませんか?この記事では、その中から『地域密着型通所介護(小規模デイサービス)』についてご紹介していきます。『通所介護』との違いも合わせてご説明していますので、参考にしてみてください。
1.地域密着型通所介護(小規模デイサービス)とは
そもそも小規模デイサービスである地域密着型通所介護とは、どのような事業なのでしょうか。
ご説明していきます。
1-1.通所介護との違いは?
大きな違いは、抱えられる利用者の定員数です。
地域密着型通所介護は18人以下、通所介護は19人以上と定められています。
次に利用者の住んでいる地域、つまり住所によって利用できるかどうかが異なるのです。
地域密着型通所介護は原則的に事業所のある市町村に住んでいる住民限定で、通所介護は利用者の住所に縛りはありません。
ただし市町村の同意を得られれば地域に関わらず利用者を受け入れることもできる施設もありますので、適宜直轄の窓口に確認してみましょう。
あと、費用に関しても通所介護に比べて地域密着型通所介護の方が割高になっていることを覚えておきましょう。
1-2.地域密着型通所介護とは?
地域密着型通所介護とは利用定員18人以下の小規模の老人デイサービスセンターなどが該当し、そういった施設に通って食事や入浴、その他日常生活上で必要な支援や生活機能訓練などを日帰りで実施する介護サービスのことです。
利用者自身の心身機能の維持や向上を目指すとともに、利用者をお預かりすることでご家族にかかる負担を軽減します。
利用できる対象者は、要介護1以上の認定を受けた人です。
提供されるサービスの一例は以下のようなものがあります。
- 食事、入浴、排せつの介護
- 健康管理、服薬サポート
- 日常生活動作訓練
- 口腔機能向上サービス
- リハビリテーション
- レクリエーション
こうしたサービスを、日中限定の日帰りで受けられます。
施設の多くには看護師が常駐しているため、健康管理や服薬サポートも安心です。
利用者を自宅から施設まで送迎するサービスが付帯していることも多くなっています。
2.地域密着型通所介護にかかる費用
認定されている要介護度状態区分と利用時間によって差がありますので、一覧表にしてご紹介します。
以下の内容は心身の状態に応じて段階的に分けられる要介護度状態区分の目安であり、要介護者の身体の状況や生活環境などさまざまな要件によって異なり、その決定は主治医による意見書や審査会で審議されて決定されるものです。
2-1.要介護1
身だしなみや部屋の掃除など、日常的な動作になにかしらの介助を必要とする状態です。
排泄や食事に関してはほぼひとりで対応できるものの、歩くことや立ち上がること、片足や両足で立った姿勢を維持することなどの動作をひとりですることが困難な状態を指し、混乱や理解低下といった状態であればこの区分といえます。
掛かる費用は、以下の通りです。
- 3時間以上4時間未満:409円
- 4時間以上5時間未満:428円
- 5時間以上6時間未満:645円
- 6時間以上7時間未満:666円
- 7時間以上8時間未満:739円
- 8時間以上9時間未満:768円
2-2.要介護2
要介護1とプラスして、排泄や食事に関してもなにかしらの介助を必要とする状態です。
掛かる費用は、以下の通りです。
- 3時間以上4時間未満:469円
- 4時間以上5時間未満:491円
- 5時間以上6時間未満:761円
- 6時間以上7時間未満:786円
- 7時間以上8時間未満:873円
- 8時間以上9時間未満:908円
2-3.要介護3
要介護1や2よりも、さらに重い状態を指します。
身だしなみや部屋の掃除などの日常的な動作、排泄や食事、歩くことや立ち上がること、片足や両足で立った姿勢を維持することなどの動作がひとりでできず、不安行動や理解低下がみられる場合はこの区分です。
掛かる費用は、以下の通りです。
- 3時間以上4時間未満:530円
- 4時間以上5時間未満:555円
- 5時間以上6時間未満:879円
- 6時間以上7時間未満:908円
- 7時間以上8時間未満:1,012円
- 8時間以上9時間未満:1,052円
2-4.要介護4
ここまでは介助があればひとりでできる状態でしたが、要介護4に認定される人は、そのほとんどがひとりでできないレベルです。
掛かる費用は、以下の通りです。
- 3時間以上4時間未満:589円
- 4時間以上5時間未満:617円
- 5時間以上6時間未満:995円
- 6時間以上7時間未満:1,029円
- 7時間以上8時間未満:1,150円
- 8時間以上9時間未満:1,197円
2-5.要介護5
要介護5になると、ほぼ全ての動作がひとりでできず、寝たきりの状態であると思って相違ありません。
掛かる費用は、以下の通りです。
- 3時間以上4時間未満:651円
- 4時間以上5時間未満:682円
- 5時間以上6時間未満:1,113円
- 6時間以上7時間未満:1,150円
- 7時間以上8時間未満:1,288円
- 8時間以上9時間未満:1,339円
3.地域密着型通所介護のメリットとは?
地域密着型通所介護は、市区町村が介護事業者を指定します。
サービス基準や介護報酬などに関してもその地域の現状を考慮して市区町村が設定するため、利用時間や制限回数などが柔軟に対応可能であることは、地域密着型通所介護のメリットです。
4.地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の運営基準を満たす際の注意点について
地域密着型通所介護を運営しようとする場合、事業者が気をつけていないといけない『運営基準』についてご説明しておきます。
4-1.運営基準を満たさなかった場合、最悪指定取り消しも
運営基準を守らなかった場合についてご説明していきます。
定員厳守の条件
先ほどもご説明したとおり、地域密着型通所介護は18人以下と定められており、1ヶ月あたりの利用者が450人以下である必要があります。
もし定員が超過してしまった場合、超過した月の翌月から規定人数に戻った月まで利用者全員の介護報酬が、30%減算されるという措置が取られ、定員超過状態が2ヵ月以上続いてしまうと指定取り消しになる可能性もあるので注意しましょう。
職員の離職によって人員基準を下回った場合
看護職員は条件によって常駐義務はないのですが、介護職員に関しては常駐が必須です。
介護職員が離職して欠員となって定められた人員基準の1割を超えてしまった場合は、欠員がでた月から欠員が解消された月までの間、同じように介護報酬が30%減算されます。
これも利用者の定員超過と同じく、長期にわたって欠員が続いた場合は指定取り消しになる可能性があるので注意しておいてください。
4-2.開業時より、開業後に注意が必要
事業所を開業するためには人員基準や設備基準など、さまざまな条件をクリアする必要ありますので、注意しているので問題ないでしょう。
しかし、無事開業できてからが問題なのです。
クリアしておくべき条件は非常に細かく、その数も大変多くなっています。
また、さまざまな記録や実績入力など多岐にわたる数多くの事務作業が存在しているので、開業してからもそういった細かい部分も含めて気を配りましょう。
こうしたさまざまな日常業務に追われながら経営を続けていく中で、知らない間に運営基準を下回ってしまい、実地指導のときに指摘されるケースがあとを絶ちません。
せっかく努力して開業したのに、指定取り消し措置となってはもったいないので、しっかりとした運営を心がけてください。
まとめ
割高とはいえ、通所介護に比べて柔軟性の高い地域密着型通所介護についてまとめました。
これから開業しようと考えている方にとっては、こういう事業体もあるということがご理解いただけたのではないでしょうか。
介護業界を取り巻く環境は、まだまだ厳しい状態が続くと思われます。
そのため、基準を遵守し、他社との差別化を図りながら独自のサービスと魅力を提供していくことが、長く愛される施設となる秘訣です。
必要に応じて介護コンサルタントに相談するのもひとつの方法ですので、柔軟な発想と幅広い知見を持って、経営を続けていきましょう。