人材開発支援助成金を分かりやすく解説!受給条件や申請方法、受給額まで
人材開発支援助成金についてお調べですね。
人材開発支援助成金とは、労働者のキャリアアップを促進させるための助成金です。
即戦力人材を採用するのではなく、自社内でキャリア形成する事業主に対して助成されます。
専門知識や専門技能の取得に対して訓練を計画・実行することで助成金が支給されるのです。
今回は、人材開発支援助成金の7つのコースごとの要件や申請の流れを徹底解説していきます。
これから人材育成に取り組もうとしている事業主は必見です!
賢く助成金を活用して、社内の人材を育てましょう。
1.人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、雇用する労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。
職務に関係ある専門的な知識や技能を習得させた事業主に対して助成されます。
人材開発支援助成金には、実施する内容によって6つのコースが用意されています。
コース名 | 助成内容 |
①特定訓練コース・一般訓練コース | 在職者訓練、事業分野別指針に定められた内容の訓練、専門実践教育訓練などに対する助成金 |
②教育訓練休暇付与コース | 有給教育訓練休暇制度、または120日以上の長期教育訓練休暇制度の導入によって労働者が休暇を取得して訓練を受けた場合の助成金 |
③特別育成訓練コース | 有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合の助成金 |
④建設労働者認定訓練コース | 認定職業訓練・指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の助成金 |
⑤建設労働者技能実習コース |
以下のいずれかを実施した場合の助成金
|
⑥障害者職業能力開発コース | 障害者職業能力開発訓練施設設置や、訓練運営費に対する助成金 |
コースによって、要件や支給額が異なります。
自社がどのコースを活用して助成金を受給するかしっかりチェックし、コースの内容を理解しておきましょう。
コース1.特定訓練コース・一般訓練コース
(厚生労働省│パンフレット(特定訓練コース、一般訓練コース)簡易版)
特定訓練コースとは、在職者訓練、事業分野別指針に定められた内容の訓練、専門実践教育訓練などに対する助成金です。
具体的には、以下のような訓練をした場合に助成されます。
- 若年労働者(採用から5年以内で35歳未満)への訓練
- 熟練技能者の指導力強化や技能承継のための訓練、認定職業訓練
- 海外関連業務に従事するグローバル人材育成のための訓練
- 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付きの訓練
- 直近2年間に継続して正規雇用の経験のない中高年齢新規雇用者等(45 歳以上)を対象とした OJT付きの訓練
基本的に訓練時間は10時間以上と定められていますが、雇用方訓練の場合は時間が定められていません。
上記の訓練内容以外の訓練は、一般訓練コースが適用されます。
一般訓練コースは、20時間以上の時間をかけなければなりません。
支給額は、OFF-JTかOJTかによって変わります。
(厚生労働省│パンフレット(特定訓練コース、一般訓練コース)簡易版)
OFF-JTとは、合同研修や講習などの座学によるスキルのインプットのことです。
一方、OJTは先輩社員などの指導者によって実務経験を通じてスキルアップをする訓練を指します。
コース2.教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースとは、有給教育訓練休暇制度や長期教育訓練休暇制度の導入によって労働者が休暇を取得して訓練を受けた場合の助成金です。
有給教育訓練休暇制度と長期教育訓練休暇制度の違いは、以下のように定められています。
(厚生労働省│パンフレット(教育訓練休暇付与コース)簡易版)
制度導入経費と教育訓練休暇中の賃金の一部が助成されます。
どちらの教育訓練休暇制度を定めるかによって、助成金の支給額が異なります。
(厚生労働省│パンフレット(教育訓練休暇付与コース)簡易版)
有給による休暇取得は1人あたり最大150日までです。
支給対象者数の上限は、雇用者数が100人未満であれば1人、100人以上であれば2人となっています。
コース3.特別育成訓練コース
特別育成訓練コースとは、有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合の助成金です。
正社員転換または処遇改善を目的とした場合に限られており、人材育成にかかった経費や賃金に対して助成されます。
特別育成訓練コースで認められる訓練内容は以下の通りです。
- 一般職業訓練
- 有期実習型訓練
- 中小企業等担い手育成訓練
訓練内容の条件は細かく定められているため、『人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)のご案内(詳細版)』をしっかり確認してください。
どのような人材育成を行うかによって、支給の要件が異なるため注意しましょう。
支給額は、訓練の内容ごとに変わります。
1年度1事業あたりの支給限度額は1,000万円です。
また、1人あたりの助成時間数は1,200時間と定められているため、注意して金額を計算しましょう。
コース4.建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースとは、認定職業訓練・指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の助成金です。
もともと建設労働者確保育成助成金でしたが、平成30年4月に統合されました。
対象の訓練内容は、以下のような訓練です。
- 園芸サービス系造園科
- 木材加工系木工系
- 建築施行系木造建築科
- 建築外装系屋根施行科
ほかにも、対象の訓練はたくさんあります。
『建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)』で確認しましょう。
助成額は、広域団体認定訓練助成金の支給、または認定訓練助成事業費補助金の交付を受けて都道府県が行う助成により助成対象経費とされた額の6分の1です。
建設労働者認定訓練コースは、併用して特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの申請もしなければなりません。
訓練の詳細や支給額は、特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの計画時にハローワークで相談することをおすすめします。
コース5.建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、建築関係の事業主が労働者のために技能実習・講習を行った場合の助成金です。
以下のいずれかを実施した場合の助成されます。
- 安全衛生法に基づく教習や技能講習、特別教育
- 能開法に規程する技能検定試験のための事前講習
- 建設業法施行規則に規定する登録期間技能者講習
対象訓練とするためには細かな規定があり、全て満たす必要があります。
- 1日1時間以上の実習であること
- 最長6ヶ月以内の技能実習であること
- 指導員は、職業訓練指導員免許を持っている者、1球技能検定合格者、もしくは管轄労働局長が認めた者であること
支給額は、経費助成と賃金助成の合算額です。
経費助成
事業主区分 | 助成額 | |
中小建設事業主(従業員20人以下) | 対象経費の3/4 | |
中小建設事業主 (従業員21人以上) |
35歳未満の労働者 | 対象経費の7/10 |
35歳以上の労働者 | 対象経費の9/20 | |
中小建設事業主以外の建設事業主で女性建設労働者に実技実習を行う場合 | 対象経費の3/5 |
1つの技能実習について、1人あたりの上限は10万円です。
賃金助成
事業主区分 | 助成額 |
中小建設事業主(従業員20人以下) | 講習を受けた労働者1人あたり7,600円×講習日数 |
中小建設事業主(従業員21人以上) | 講習を受けた労働者1人あたり6,650円×講習日数 |
ひとつの技能実習について、20日分が上限です。
詳しい訓練内容の規定や支給額については、『建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)』で確認しましょう。
コース6.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者職業能力開発訓練施設設置や、訓練運営費に対する助成金です。
以下のいずれかに該当する労働者に対する訓練に対して助成されます。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 発達障害者
- 高次脳機能障害のある者
- 難治性疾患を有する者
訓練期間は6ヶ月以上2年以内、1日5〜6時間と定められています。
支給額は、以下の通りです。
施設・設備の設置・整備または更新に対する助成
- 対象経費の3/4
運営費に対する助成
重度障害者に対する訓練の場合 | 1人あたりの運営費×4/5(上限月額17万円) |
重度障害者以外に対する訓練の場合 | 1人あたりの運営費×3/4(上限16万円) |
重度御障害者が就職した場合 | 就職者1人あたり10万円 |
障害度合いの規定や、支給額の細かな定めは『人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)のご案内』に記載されているので確認しましょう。
ここまで、7つのコースの概要を見てきました。
自社がどのコースで受給するかが分かったら、受給のための要件をコースごとに確認していきましょう。
2.コースごとに違う受給の要件
人材開発支援助成金を受給するためには、コースごとの要件を満たす必要があります。
それぞれ確認し、自社が受給の対象となり得るのか確認していきましょう。
コース1.特定訓練コース・一般訓練コース
特定訓練コース・一般訓練コースで助成金を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 職業能力開発推進者を専任した上で、計画を策定・従業員に周知している事業主
- 訓練受講者に適正な賃金を支払っている事業主
- 訓練にかかった経費を全て負担している事業主
- 訓練計画届提出日の前日の6ヶ月前から支給申請提出日までの間に事業主都合で従業員を離職させていない事業主
- 労働局が行う審査や実地調査に協力する事業主
申請前に、しっかりと要件を確認しておきましょう。
コース2.教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースで助成金を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 職業能力開発推進者を専任している事業主
- 従業員の意見を尊重しながら職業能力開発計画を作成し、従業員に周知している事業主
- 教育訓練休暇制度・長期教育訓練休暇制度を導入し、実際に休暇・訓練をさせた事業主
- 計画届を提出した前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請日の提出日までの間に、従業員を事業主都合で離職させていない事業主
- 労働局が行う審査や実地調査に協力する事業主
申請前に、しっかりと要件を確認しておきましょう。
コース3.特別育成訓練コース
特別育成訓練コースで助成金を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 訓練機日間中、訓練受講者に適正な賃金を払っている事業主
- 訓練計画届提出日の前日の6ヶ月前から支給申請提出日までの間に事業主都合で従業員を離職させていない事業主
- 労働局が行う審査や実地調査に協力する事業主
申請前に、しっかりと要件を確認しておきましょう。
コース4.建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースで助成金を受けるための主な要件は以下の通りです。
中小建設事業主
- 雇用管理責任者を専任している事業主
- 認定訓練助成事業費補助金または広域団体認定訓練助成金の交付を受けて認定訓練を行う事業主
- 雇用保険の適用を受ける事業主
建設労働者認定訓練コースは、特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースのいずれかと併用して申請します。
そのため、特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの要件もよく確認しておきましょう。
コース5.建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースで助成金を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 中小建設事業主
- 所定労働時間ないに受講させ、適当な賃金を支払った事業主(所定時間外に受講させた場合は、増額した賃金を支払わなければならない)
中小建設事業主にも細かな定義がされているため、『建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)のご案内(建設事業主向け)』を必ず確認しましょう。
コース6.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースで受給対象となる者は、以下の4つのいずれの団体です。
- 事業主または事業主団体
- 専修学校または各種学校を設置する学校法人または法人
- 社会福祉法人
- その他障害者の雇用の促進に係る事業を行う法人
さらに、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 能力開発訓練施設の設置・整備または更新を行った後、障害者職業能力開発訓練を5年以上継続して行っている事業主
- 実施する障害者職業能力開発訓練の就職支援責任者の配置を行う事業主
- 訓練対象障害者の個人情報を取り扱う場合、訓練対象障害者の権利利益の侵害がないよう管理している事業主
これらの要件を満たした上で能力開発訓練施設の設置・整備または更新を行うようにしましょう。
ここまでそれぞれのコースの要件を確認しました。
要件に当てはまることが確認できたら、早速申請の準備を始めるべきです。
申請方法について詳しく確認していきましょう。
3.人材開発支援助成金の申請方法
人材開発支援助成金のどのコースも、申請の流れは似ています。
以下の4つの手順にしたがって申請しましょう。
- 計画書の提出
- 訓練や制度の実施
- 支給申請
- 支給
順番に確認していきましょう。
流れ1.計画書の提出
申請の前に、計画書を管轄労働局(ハローワーク)に提出しましょう。
計画書の提出は、計画開始の1ヶ月前までとなっています。
例外として、以下の3つのコースは期限が異なるので注意しましょう。
コース名 | 提出期限 |
建設労働者認定訓練コース 建設労働者技能実習コース |
計画開始の1週間前まで |
障害者職業能力開発コース | 7/16〜9/15の期間、もしくは1/16〜3/15の期間 |
計画書には、コース内容に応じた訓練や教習内容を記入していきます。
計画書に変更があった場合は変更届を出さなければなりません。
あらかじめ実行性のある計画になっているか十分に検討しましょう。
このとき必要な書類は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
流れ2.訓練や制度の実施
提出した計画通りに訓練や制度を実行していきましょう。
訓練や制度の整備などにかかった費用は事業主が負担しなければなりません。
経費助成されるコースを利用する場合は、経費にかかった見積書・納品書・請求書を残しておくように注意しましょう。
流れ3.支給申請
計画実行期間が終わったら、管轄労働局(ハローワーク)へ支給申請をしましょう。
申請期限は、計画終了日の翌日から2ヶ月以内です。
支給申請に必要な書類は、選択するコースによって大きく異なります。
10種類以上の書類が必要なので、書類不足や不備が多いです。
期限には余裕を持って書類のチェックをしてもらいましょう。
必要な書類は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
流れ4.支給
申請内容が認定されれば、指定の口座へ助成金が支給されます。
審査期間には、事実確認のため事業所へ視察があったり電話応対が求められることも珍しくありません。
調査に協力しなければ、支給対象から外れてしまいます。
書類提出やヒアリングなど労働局の調査に協力しましょう。
4.人材開発支援助成金を申請するときの注意点
人材開発支援助成金を活用しようと考える事業主は多いでしょう。
しかし、注意点を知っておかなければ助成金を受給できないかもしれません。
知っておくべき注意点は、以下の2つです。
- 申請手続きが複雑
- 受給した際は雑収入として処理する
順番に確認していきましょう。
注意点1.申請手続きが複雑
人材開発支援助成金は、申請手続きが複雑となっています。
というのも、訓練や制度導入をする前に計画を立てなければならないからです。
事前に計画内容が認められなければ、助成されません。
また、手順を誤って先に実施してしまうと同じことを行っても「新しく制度が導入された」と認められないため、助成対象から外れてしまいます。
しっかりとスケジュールを確認した上で訓練や制度導入をしましょう。
注意点2.受給した際は雑収入として処理する
受給した場合、助成金は雑収入として処理しましょう。
「助成金」と聞くと非課税に考える事業主は多いですが、課税対象です。
仕分けのタイミングは、支給決定通知書が到着したときとなっています。
しかし、施策実行から入金まで時間がかかることが多いです。
決算期を跨いでしまう場合は、一度未収入金として処理しておきましょう。
5.人材開発支援助成金の受給なら社労士に相談しよう
人材開発支援助成金を活用したいと考えているのであれば、社労士に相談することをおすすめします。
人材開発支援助成金はどのコースでも10種類以上の書類を揃えなければなりません。
そのため、助成金に慣れていない経営者は、書類作成に戸惑って時間を取られる可能性が高いです。
せっかく、助成金対象となるキャリアアップを実行しても、経費として認められんあければ受給の許可がおりません。
もし、少しでも申請に不安があるのであれば、井上社労士事務所にご相談ください。
受給額が最大化となる申請方法をアドバイスいたします。
また、面倒な書類作成は全て丸投げOKです。
相談費無料なので、まずはお気軽にLINEでご相談ください。
まとめ
人材開発支援助成金とは、労働者のキャリアアップを促進させるための助成金です。
即戦力人材を採用するのではなく、自社内でキャリア形成する事業主に対して助成されます。
これから人材育成に取り組もうとしている事業主なら、受け取りたい助成金です。
社内の人材を育て、さらに会社を発展させましょう。