派遣先は派遣社員に休業手当を支払う義務はあるのか!?
「派遣社員に休業手当を支払う義務があるのか知りたい…」こんな悩みをお持ちですね。
派遣社員に休業手当を払うのは派遣元なのか、それとも派遣先であるのかで迷われている経営者の方も多くいると思います。
結論から言えば支払い義務は派遣元なのですが、その中で派遣先が派遣社員に対して休業手当の支払い義務が生じてしまう条件について解説します。
その条件を知ることで、派遣社員に休業手当を支払う義務を回避することができるでしょう。
是非参考にしてみてください。
1.休業手当とは?
休業手当とは、雇用主側からの都合で休業を余儀なくした際に、従業員や派遣社員に支給される手当のことを指します。
支給する額は、その従業員や派遣労社員の平均賃金の60%以上を支払わなければなりません。
土日祝日など定められている定休日に関しては、休業対象にはならず、支払いの義務は無いとされています。
2.派遣労働者に休業手当を支払うのは派遣元
結論から言うと、休業手当を支払う義務があるのは派遣元ではなく、派遣先、つまり派遣会社にあります。
これはそもそも派遣元である派遣会社が派遣社員と労働契約を交わしているからです。
派遣先の契約対象はあくまでも派遣元である派遣会社ですので、派遣労働者に休業手当を支払う必要はありません。
それによって派遣元の派遣会社は、派遣社員に対して労働基準法第26条で定められている平均賃金の60%以上を支払う義務が生じます。
なので派遣社員に対して休業手当を支払うのは、派遣元である派遣会社となります。
3.契約期間中は基本的に派遣労働者を解雇できない
派遣労働者の契約期間中においては、基本的に契約の中途解除はできません。
その理由を以下にまとめました。
- 派遣の解雇には合理的な理由が必要
- クビにすると派遣に告げるのはルール違反
以上の内容を理解すれば、契約期間中でも派遣社員を解雇することができます。
基本的には派遣社員を一方的に解雇することはできないので、その点には注意してください。
3-1.派遣労働者の解雇には合理的な理由が必要
コロナウイルスによる派遣労働者の解雇には、合理的な理由が必要です。
各都道府県知事などから業務の停止命令や、制限命令の指示・要請を受けたなどの合理的な理由があれば、派遣を契約途中でも解雇できます。
ですが派遣労働者を解雇するには、解雇するに値する適切な対応をしなければなりません。
派遣先は労働者を自らの都合によって(コロナウイルスの影響も含む)途中解雇する場合、以下の対応をしましょう。
- 新たな就業の機会を与える必要がある。
- 休業手当に必要な金銭を負担する。
派遣先が労働者の途中解雇する場合には、以下の内容を守るようにしてください。
派遣先の都合によらない解雇の場合でも、派遣先は労働者に他の働き口に就く機会を斡旋しなければならなりません。
ただし例外としまして、労働者が業務中に何か不正を働いていたり、無断欠勤が多いなどの正当な理由があれば、上記の内容関係なく解雇することができます。
その場合にはしっかりとした事前調査などをしなければ、場合によっては不当解雇となり、法律で罰せられる可能性があるので注意してください。
派遣社員を途中解雇するには、コロナウイルスによる停止・制限命令や、派遣労働者の不正などといった合理的な理由が必要です。
3-2.クビにすると派遣労働者に告げるのはルール違反
派遣先が派遣社員に対し、「来週から来なくていいよ」など直接クビを告げるのはルール違反です。
クビを告げたとしても、法的に辞めさせる効果はありません。
なぜならば、その派遣社員と派遣先には直接的な雇用関係が無いからです。
直接雇用しているのは派遣元の派遣会社なので、派遣の解除要請は派遣元に行う必要があります。
また解除要請をするにしても、合理的な理由が必要になるので、一方的な解雇はできません。
派遣がクビを通知されるとしても、それは派遣元の派遣会社からであり、通知は30日前から行われます。
「来週からこなくていいよ」というのはそもそも不可能というわけですね。
派遣契約の解除を直接派遣先が告げる必要はないので、それをあえて告げるというのはルール違反と言えます。
4.不可抗力は基本休業手当に適応されません
結論から言いますと、コロナウイルスを自然災害という理由から不可抗力にすることは基本できません。
よって不可抗力を理由に支払いの不払いは問題になります。
不可抗力が適応されない理由について、以下の内容にまとめました。
- 不可抗力は基本的に適応されない
- 仮に不可抗力が適応可能である場合
- 不可抗力と称して不正に休業手当を支払わなかった場合
これらは派遣社員に対しても適応されるので、企業でコロナウイルスによる不可抗力を考えているのであれば、目を通すことをおススメします。
4-1.不可抗力は基本的に適応されない
本来であればコロナウイルスは天災クラスであり、事業主などが最大の注意を払ったとしても避けることはできませんでした。
それによってコロナウイルスは不可抗力に該当しますが、雇用調整助成金などが出ていることもあり、国としてはそちらを活用してほしいということですね。
不可抗力を適応するのが完全に不可能というコメント等は国からありませんが、不可抗力を理由としてしまうと多くの企業が労働者に休業手当を払わず、それが後に大きな問題に繋がるからです。
なので休業手当を支払う場合があった場合、雇用調整助成金などを活用して労働者に支払うようにしてください。
雇用調整助成金など申請手続きが面倒、或いは自身が無い場合には、助成金の専門家である社労士に相談しましょう。
4-2.仮に不可抗力が適応可能である場合
仮に不可抗力によって休業手当の支払いが回避できる場合、雇用主は労働者に対して不利益を最大限回避しなければなりません。
- テレワークなど、労働者が自宅で仕事が可能な環境を導入。
- 労働者の働く時間帯や曜日などの調整。
- 他の働ける環境を労働者に与える。
これらの環境作りなどをせず、コロナウイルスによる不可抗力という理由だけで、休業手当の支払いをしないということはできません。
現状ではこれで休業手当を支払はなくてもいい、という不可抗力の適応条件などは国から発表されていませんが、事業停止命令等を受けていないのであれば、雇用調整助成金も出ていることもあり、上記の環境作りなどをしてみるのはいかがでしょうか。
4-3.不可抗力と称して不正に休業手当を支払わなかった場合
不可抗力と称して何も対策することなく、不正に休業手当を労働者に支払わなかった場合、その企業は法的に罰せられる可能性があります。
休業手当の未払いは労働法基準違反となり、30万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、注意してください。
コロナウイルスは天災だと甘い認識で対処してしまうと罰則だけではなく会社の信頼にもかかわるので、上記の対応を心がけましょう。
5.まとめ:派遣労働者に休業手当を支払うのは派遣会社
派遣社員に休業手当を支払う義務があるのは、派遣社員を直接雇用している派遣会社です。
しかし、派遣元が派遣労働者を途中解雇する場合には、その支払い義務が派遣元に移ってしまいます。
場合によってどちらが派遣社員に休業手当を支払うのか、派遣先と派遣元で話し合う必要があるでしょう。
仮に休業手当を支払わなければならない状況であれば、派遣元の会社は休業手当の支払いや、業務の停止や制限によって、国や各都道府県からの雇用調整助成金が必要だと思います。
そういった場合、多くの手間や労力が消費されますので、お困りであれば助成金のプロである『井上社労士事務所』が相談に乗りますので、是非一度ご連絡ください。