雇用調整助成金とは?新型コロナによる特例や申請方法を徹底解説
雇用調整助成金とは、従業員の休業手当に必要な費用を支援する助成金のことです。
経済上の理由によって事業活動を縮小しなければならない事業主に適用されます。
新型コロナウイルス感染症の影響によって従業員を休業させざるを得ない場合にも特例が適用され、注目されました。
短縮営業や休業要請によって休業した事業者に対して、従業員の休業補償がされるのです。
今回は、雇用調整助成金の要件や申請の方法、必要書類などを分かりやすく解説!
雇用調整助成金を活用し、従業員の生活を守りましょう。
1.雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、従業員の休業手当に必要な費用を支援する助成金のことです。
景気の変動や作業構造の変化など経済上の理由によって事業活動を縮小しなけえればならない事業主に適用されます。
雇用調整助成金の目的は、休業中も従業員の雇用を維持することです。
そのため、雇用調整助成金は一時的な休業にのみ給付されます。
一時的な休業中は、従業員に教育訓練や出向をさせることも可能です。
また、2020年から世界的に流行している新型コロナウイルス感染予防のため、都道府県から休業要請をされた事業主も多いでしょう。
今回の新型コロナウイルス予防による休業要請協力をした事業主も、特例によって雇用調整助成金の対象となります。
次の章で詳しい要件を確認していきましょう。
2.雇用調整助成金が支給される要件
雇用調整助成金は、どんな事業主でも支給されるわけではありません。
雇用調整助成金が支給される要件が細かく定められているので確認しておく必要があります。
通常版・新型コロナウイルス感染予防による特例版のそれぞれを確認していきましょう。
2ー1.通常版
まずは、通常版の要件から見ていきましょう。
受給するためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 売上高や生産量などが最近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べて10%減少していること
- 従業員の雇用量が最近3ヶ月間の月平均が前年同期に比べて、中小企業なら10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外なら5%を超えてかつ6人以上増加していないこと
- 過去に雇用調整助成金を受給しているなら、直前の対象期間の満了日の翌日から起算して1年以上経過していること
- 実施する調整が、以下の一定基準を満たすものであること
①休業の場合 |
もしくは
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②教育訓練の場合 |
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③出向の場合 |
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もっと詳しく受給要件を確認したい場合は、厚生労働省の『雇用関係助成金共通の要件』を確認しましょう。
2ー2.特例版
続いて、新型コロナウイルス感染症による特例版の要件を見ていきましょう。
受給するためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。
- 中小企業であり、従業員の解雇などを行わずに雇用を維持している
- 新型コロナウイルス感染症などの特別措置(緊急事態宣言に伴う休業要請など)によって休業・短縮営業を求められた事業者で、これに協力している
- 以下のいずれかに該当する休業手当てを従業員に支払っている
- 労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っている
- 上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っている(ただし支払い率60%以上である場合のみ)
特例版は、緊急対応期間である4月1日〜6月30日中に限って適用されます。
3.雇用調整助成金の給付額と事例
雇用調整助成金の額は、賃金負担額の相当額に規定された助成率を乗じた額です。
従業員に対して教育訓練を行った場合は、さらに1人1日あたり1,200円加算されます。
助成内容 | 中小企業 | 中小企業以外 |
休業を実施し、休業手当または教育訓練をした場合 | 2/3 (1人1日あたりの上限は8,330円) |
1/2 (1人1日あたりの上限は8,330円) |
教育訓練をした場合の加算額 | 1人1日あたり1,200円 |
たとえば、以下のようなときの給付額を計算してみましょう。
- 中小企業が従業員5人を30日間休業させた
- 内10日間教育訓練を実施した
- 1日あたり7,000円の休業手当を支払った
このとき、7,000円×5人×30日間=105万円の休業手当を支払っていることになります。
中小企業であれば、105万円×2/3=70万円が助成されることになるのです。
さらに、教育訓練を10日間実施しているため、1,200円×5人×10日間=6万円も加算されます。
ただし、対象労働者1人あたり8,330円を超える助成はされませんので注意しましょう。
特例版では簡易化されている
新型コロナウイルス感染症による特例版では、助成額は簡易に計算できるように改訂されています。
実際に支払った休業手当額を100%助成するとされているのです。
もし、従業員5人を30間休業させ、休業手当に1人あたり8,000円支払ったとき、以下のように計算します。
- 8,000円×5人×30日間=120万円
ただし、1人あたりの上限額を超える場合は8,330円×休業した日数となります。
4.雇用調整助成金の申請に必要な書類
「雇用調整助成金を申請したい」と思っているのであれば、まずは申請に必要な書類を揃えなければなりません。
雇用調整助成金の申請には、以下の6つの書類が必要です。
- 休業等実施計画(変更)届
- 休業・教育訓練 計画(実行)一覧表
- 休業協定書(教育訓練協定書)
- 休業等支給申請書
- 助成額算定書
順番に確認し、どのような書類が必要か知っておきましょう
書類1.休業等実施計画(変更)届
まず、事前に休業など実施計画書届を作成し、管轄の労働局へ提出する必要があります。
休業等実施計画(変更)届は、厚生労働省ホームページからダウンロードが可能です。
ただし、初回の計画届は「雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書」「雇用調整事業所の雇用指標の状況に関する申出書」も添付して提出しなければなりません。
この場合、提出期限は休業開始日の2週間前です。
コロナウイルス感染症による特例の場合には、休業等実施計画(変更)届の提出は不要です。
書類2.休業・教育訓練 計画(実行)一覧表
休業等実施計画(変更)届と一緒に休業・教育訓練 計画(実行)一覧表を提出しましょう。
労働者ごとの休業日や教育訓練の実施日を記入する必要があります。
休業・教育訓練 計画(実行)一覧表は、厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。
また、対象期間終了後は実績として実施した通りの表を改めて作成しなければなりません。
支給申請時に提出しましょう。
書類3.休業協定書(教育訓練協定書)
休業協定書とは、事業主と従業員との間で取り交わす休業に関する約束ごとをまとめた書類のことです。
休業による従業員の不安を取り除くために作成します。
休業等実施計画(変更)届と一緒に提出しましょう。
休業協定書はフォーマットが用意されておらず、自分で作成しなければなりません。
以下のような項目を記入し、作成しましょう。
- 休業の期間
- 休業対象者
- 休業手当の額
- 休業手当の支払いの基準
- 協定書の有効期間
- 協定書の作成日
休業協定書は、従業員1人1人と取り交わす必要はありません。
事業主と従業員代表で取り交わしましょう。
また、教育訓練を行う場合は教育訓練協定書も必要です。
休業協定書と同様に、以下のような内容を記載していきます。
- 教育訓練の内容
- 教育訓練の期間
- 教育訓練の対象者
- 協定書の有効期間
- 協定書の作成日
特に作成に関して規定はありません。
必要事項をしっかり明記し、作成しましょう。
書類4.休業等支給申請書
対象期間が終わったら、休業等支給申請書を作成しましょう。
休業等支給申請書には、実際に行った休業日数や対象労働者、助成額の算定などを記入していきます。
休業等支給申請書は、厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。
空欄を埋めていくだけなので簡単です。
給付先の講座情報も間違えずに記入しましょう。
書類5.助成額算定書
休業等支給申請書を作成するために、助成額算定書も必要です。
助成額算定書によって助成金の金額を定めていきます。
休業手当等の支払い率や1人日当たりの助成金単価などを記入し、助成額を算定するのです。
助成額算定書は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
休業等支給申請書に添付して提出しましょう。
以上が雇用調整助成金の申請に必要な書類です。
書類によって提出のタイミングが異なるので、事前に確認しておく必要があります。
次の章で解説する雇用調整助成金の申請の流れを見ながら、書類提出のタイミングも整理していきましょう。
5.雇用調整助成金の申請の流れ
雇用調整助成金を受給するまでには、少し時間がかかります。
というのも、先に休業計画を提出し、実際に休業してから支給申請を行うからです。
具体的には、以下の5つのステップに沿って手続きを行っていきます。
- 休業の計画を作成する
- 従業員の代表と休業計画を合意する
- 計画書を労働局・ハローワークに提出する
- 計画通りに休業させて休業手当を支払う
- 労働局・ハローワークに支給申請をする
順番に確認していきましょう。
ただし、コロナウイルス感染症による特例に当てはまるなら、計画書を作成する必要はありません。
特例適用であれば、計画書なしに先に休業をしても、後から助成金申請できます。
流れ1.休業の計画を作成する
まずは、休業の計画を作成しましょう。
どれくらいの期間休業し、いくらの休業手当を支払うのかを決めていきます。
助成金は初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分までしか支給されません。
また、1人1日あたり最大8,330円までの助成となっていることも覚えておく必要があります。
助成金をあてにしているのであれば、上限をしっかり把握しておくべきです。
流れ2.従業員の代表と休業計画を合意する
休業計画を作成したら、従業員に確認し合意を取ります。
合意を取ったことを明確にするため、休業計画を交わしましょう。
最悪の場合、合意が取れず従業員が離職してしまうことも考えられます。
事業主・従業員にとって最適な条件を提示しましょう。
流れ3.計画書を労働局・ハローワークに提出する
休業を始める日の前日までに計画書を管轄の労働局(ハローワーク)提出しましょう。
このとき、必要な書類は以下の通りです。
- 休業等実施計画(変更)届
- 休業・教育訓練 計画一覧表
- 休業協定書
休業中に教育訓練を行うのであれば、教育訓練協定書も必要です。
また、初初回の計画届は以下の書類も用意しましょう。
- 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
- 雇用調整事業所の雇用指標の状況に関する申出書
この場合、提出期限は休業開始日の2週間前です。
ただし、コロナウイルス感染症による特例を適用させる場合、計画書の提出は必要ありません。
計画書なしに先に休業をしても、後から助成金申請ができるので安心しましょう。
流れ4.計画通りに休業させて休業手当を支払う
提出した計画通りに休業をさせ、休業手当を支払います。
助成を受ける前に休業手当の支払いが必要なので注意しましょう。
もし、提出した計画書通りに休業しなかった場合は、変更届を提出しなければなりません。
- 休業等実施計画(変更)届
- 休業・教育訓練 計画一覧表
以上の2つの書類が必要です。
流れ5.労働局・ハローワークに支給申請をする
申請した対象期間が終わったら早めに管轄の労働局(ハローワーク)に支給申請を行いましょう。
対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内に申請する必要があります。
たとえば、4月1日〜5月10日まで休業していたのであれば、5月11日〜7月10日までが支給申請の期間です。
このとき、以下の書類を準備しましょう。
- 休業等支給申請書休業等
- 助成額算定書
- 休業・教育訓練 計画(実行)一覧表
1日でも締め切りを過ぎると支給申請書は受け付けられません。
審査の後、指定の口座へ助成金が振り込まれます。
支給申請書など提出した書類はすべて写しを5年間保存する必要があるので注意しましょう。
6.雇用調整助成金は早めに!社労士に頼って申請しよう
ここまで雇用調整助成金の申請方法や必要書類を見てきました。
提出書類や工程が多く、「書類の作成が難しい」「支給を希望しているけど、本業が忙しい」という人も多いでしょう。
そんな事業主の方は、社労士に相談することをおすすめします。
社労士に相談すれば、本業に専念しながらもややこしい手続きを丸投げすることが可能です。
井上社労士事務所なら、気軽にLINEで無料相談いただけます。
休業計画の立て方を指導し、受給額が最大になるようアドバイスをいたします。
もちろん、変更の多い雇用助成金の要件の変更にも対応!
コロナウイルス感染症による特例にも熟知しております。
まずはお気軽にLINEでご相談ください。お待ちしております。
7.【最新版】2020年5月22日に再々修正された雇用調整助成金ガイドブックを確認しよう
2020年5月22日に雇用調整助成金ガイドブックが修正されました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のために休業要請をされた事業主が多いことを受け、特別措置が施行されたためです。
緊急対応期間である令和2年4月1日〜6月30日に休業を実施した場合の支給要件や助成金額、申請方法などが記載されています。
通常よりも対象者が広く、助成率も高くなっています。
雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)は、厚生労働省ホームページよりダウンロード可能です。
該当する事業主は、一度確認し助成金を活用しましょう。
まとめ
雇用調整助成金とは、従業員の休業手当に必要な費用を支援する助成金のことです。
経済上の理由によって事業活動を縮小しなけえればならない事業主に適用されます。
「休業しなければならないけど雇用を守りたい」と考えている事業主なら、是非活用したい助成金です。
雇用調整助成金を活用し、事業と従業員の生活を守りましょう。