デイサービスを経営するために満たすべき人員基準とは?
デイサービス(通所介護)を経営するには、人員基準を理解している必要がありますが、その基準は正確に把握できているでしょうか?
制度改正もあって、複雑だと思っている方も多いですよね。
そこで今回は、その人員基準についてご説明していきます。
1.『デイサービス(通所介護)』とは?
デイサービス(通所介護)とは、要介護状態にある人が施設(デイサービスセンターなど)に通って入浴や排せつ、食事などの介護を受けながら機能訓練を実施し、宿泊することなくその日のうちに帰宅するサービスのことです。
基本的には、自宅から施設までの送迎を施設がすることが一般的となっており、利用者が楽しめるように書道や陶芸、生け花、リズム体操といったさまざまなレクレーションが開催されています。
デイサービスによって外出して人と触れ合うことで、閉じこもりや孤立を防止する狙いもあります。
2.人員基準とは『デイサービス』開業に必要な条件のこと
デイサービス(通所介護)施設を開業するにあたって必要な資格保有者が定められています。
それが以下の5つです。
- 管理者
- 生活相談員
- 機能訓練指導員
- 看護職員
- 介護職員
人員基準で必要最低限の人数が決まっていますが、施設の規模によって異ってくるので、説明していきます。
2-1.管理者
管理者は、常勤で1名と定められています。
採用面接などの人事面や従業員の勤務管理、給与計算など実施するとともに、従業員の規律を守るよう指導する立場が、管理者です。
管理者になるための資格に定めはなく、常勤の生活相談員・機能訓練指導員・看護職員・介護職員と兼任できます。
2-2.生活相談員
デイサービス(通所介護)として提供する時間数に応じて、専従者が1名以上必要です。
生活相談員はソーシャルワーカーとも呼ばれ、生活相談や指導などの業務に従事します。
生活相談員になるためには、社会福祉士か社会福祉主事、精神保健福祉士のどれかの資格が必要ですが、地域によっては介護福祉士の資格だけでなることも可能です。
10名以上の事業所については、生活相談員か介護職員のいずれか1名が常勤である必要があります。
2-3.機能訓練指導員
機能訓練指導員は、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を保有する人が該当します。
同じデイサービス(通所介護)施設においては他の職務との兼務が可能ですが、常勤で1名以上が必要です。
2-4.看護職員
利用定員が10名を超える場合、提供する時間に密接かつ適切に連携できる人が1名以上必要ですが、デイサービス(通所介護)の単位ごとに専従する必要はありません。
対して利用定員が10名以下の場合は、専従の看護職員もしくは介護職員が1名以上必要となっています。生活相談員もしくは看護職員、介護職員のうち、いずれか1名が常勤であることが必須です。
2-5.介護職員
利用者数が15人以下であれば1名以上、16人以上であれば15人を超えた利用者数を5で割った数に1をプラスした介護職員が、単位ごとの提供時間数に応じて必要です。
3.制度改定された人員基準の3つのポイント
2015年度の改正によって、制度が変更になりました。
その内容は、大きく分けて以下の3つです。
- 看護職員人員基準が緩和された
- 「常勤」に対する時間数が緩和された
- 生活相談員の専従条件が緩和された
デイサービス(通所介護)の人員基準がどう変わったか、ご説明します。
3-1.看護職員の人員基準が緩和された
法改正前は、看護職員が必ず1人は専従である必要がありました。
法改正後は、看護職員が1名以上いれば専従である必要でなくてもよいとなっています。
しかし病院や診療所、訪問看護ステーションとの連携によって、営業日ごとに看護職員が利用者の健康状態チェックが必須であり、提供する時間帯に密接かつ適切に連携している必要があります。
また、施設内だけでなく看護ステーションとの連携も必須です。
こうした制度改正によって人員不足に苦しんでいた看護職員が解消され、人件費の削減も可能になりました。
3-2.「常勤」に対する時間数が緩和された
「常勤」という言葉の意味が変わりました。
制度改正前は、その施設が規定している勤務時間数に達している状態で、かつ32時間以上となっていたのです。
しかし制度改正によって、育児又は家族の介護を行っている人に対して労働時間の短縮が認められている場合に限って、支障が出ないことを条件に勤務時間が30時間とされました。
こうして常勤勤務時間数が緩和されたことにより、育児や介護を理由に離職する人をつなぎとめることができるようになったのです。
3-3.生活相談員の専従条件が緩和された
制度改正前は、事業所に対して専従で1名の生活相談員が必須でした。
しかし制度改正によって、生活相談員の勤務延長時間数に加算できるサービスが追加されたのです。
地域ケア会議やサービス担当者会議に出席している時間や利用者の家を訪問して実施する在宅生活の状況確認の時間、家族からの相談対応や援助している時間、町内会や自治会、ボランティア団体などと一緒に利用者のために必要な社会資源発掘にかかる時間、そして調査に関する時間が含んでもよいことになりました。
4.人員基準を満たさなければ人員基準違反になる!
人員基準を満たしていないにもかかわらず偽って人員報告をした場合は人員基準違反になってしまいます。
6年に1回実施される実地指導時に指摘される可能性があるのですが、この場合は事前に文書で予告されるため、対策を講じることが可能でしょう。
しかしこのときに違反が発覚して監査が入ることになれば減算や新規利用者受け入れ停止、または期限付きのサービス停止といった処分を課せられることとなり、最悪の場合事業所の指定取り消しとなってしまうので注意が必要です。
5.デイサービスの人員基準を満たすための2つのポイント!
さまざまな事情によって退職されることは、経営していく中で避けることのできない問題です。
しかし、その退職者が重要な資格を保有しており、退職によって資格保有者がゼロになってしまう場合は致命傷になりかねません。
そこで、資格保有者にはできれば1人ずつ余裕を持って雇用しておくようにしましょう。
5-1.必要な資格を保有者を採用する
最近では職安に頼らずともさまざまな媒体で求人広告を出すことが可能で、SNSを活用すれば費用をかけずに応募を募ることもできるようになってきました。
こうした多様な媒体を利用して事業所のメリットをアピールし、資格保有者を採用するようにしましょう。
5-2.既存の従業員に資格取得を推奨する
資格保有者の採用と並行して、既存の従業員に新たに資格を取得してもらうという手もあります。
資格取得に向けた教材やセミナー受講料を支給するなどして、自発的に動いてもらうことで事業所内の資格保有者を増やしていきましょう。
6.まとめ
デイサービス(通所介護)を運営していくには、国によって規定されている人員基準があります。
こうした人員基準を満たさずに経営を続けていると人員基準違反となってさまざまな処分を受けることになるので、ちゃんと守るようにしましょう。
中には2015年度の制度改正によって緩和された条件もありますので、しっかりとチェックした上で事業所内の人員を見直してみてはいかがでしょうか?